大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)4820号 判決

原告

株式会社ほっかほっか亭大阪事業本部

右代表者代表取締役

青木達也

右訴訟代理人弁護士

熊谷尚之

高島照夫

中川泰夫

田中美春

被告

村平忠司

被告

安保雄次

右両名訴訟代理人弁護士

山崎武徳

鷹取重信

家近正直

出嶋侑章

桑原豊

林幸二

横泉

主文

一  原告に対し、

1  被告村平忠司は「ほつかほつか亭マニュアル集」と題した手引書五冊を引渡し、かつ、金一九一二万二五八〇円及びこれに対する昭和五七年七月六日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

2  被告安保雄次は前記手引書一冊を引渡し、かつ、金九二五万六四五一円及びこれに対する昭和五七年七月五日から支払ずみまで前同率の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  原告

主文一、二項同旨並びに仮執行宣言。

二  被告ら

1  原告の被告らに対する請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、東京都港区西新橋一丁目三番五号久田ビルにある株式会社ほつかほつか亭総本部を本部として、「ほつかほつか亭」の名称のもとに、持帰り弁当の販売店を全国的に展開しているフランチャイズ組織の関西地区のフランチャイザーの会社である。

2  このフランチャイズ組織は、各店舗にフランチャイザー(以下「ザー」という)の指定する厨房設備をおき、「ササニシキ」を使つた、たきたての温い米飯を盛りつけた持ち帰り弁当を低価格で販売することを目的とするものである。弁当の食材等は、「ザー」が指定する業者から各店舗に配送する仕組みとなつている。これは、取扱う商品が弁当という、直接消費者が口にするものだけに、商品の品質、鮮度、味覚等の管理、監督を徹底し、万一にも食中毒等を発生させないよう責任態勢を明確にしておく必要や、良質で低価格の弁当の提供を維持するために、特定の業者に大量に発注することによつて原材料の納入価格を低くさせること、さらに、どの店舗でも、同一価格、同一メニュー、同一品質の弁当が安心して購入できる態勢を維持する必要からである。

3  また、右フランチャイズ組織では、「ザー」はフランチャイジー(以下「ジー」または連盟店という)に対して、各店舗毎に、「ほつかほつか亭」の商標、別紙表示のマーク等の使用を認め、「ジー」は「ザー」に対して、加入金五〇万円、のれん使用料三〇万円(昭和五六年一月以降の加盟店は加入金三〇万円、のれん使用料五〇万円に改正)を支払うとともに、ロイヤルティとして一か月五万円(昭和五六年一月以降の加盟店は七万円に改正)を支払うことになつている。「ジー」のこれら商標やマークの使用にあたつては、消費者が他の競業者と混同誤認をきたさないようにするため、「ザー」の指定どおりの態様、方式により使用させるものとし、店舗の外観等もこの観点から外装工事は統一仕様となつている。

4  本フランチャイズ組織に加盟するには、要旨、左の内容のチェーン連盟加盟契約を締結することになつている。

(一) 連盟店は「ほつかほつか亭」という商標、別紙〈省略〉表示のマーク等を使用することができる。

(二) 連盟店は当初の契約と同時に、原告に対し、加入金として五〇万円を支払い、以後店舗をふやす毎にのれん料として一店舗あたり三〇万円を支払う。

(三) 連盟店は原告に対し、一店舗あたり一か月五万円のロイヤルティを毎月末日限り支払う。

(四) 連盟店は原告の指導するチェーン方式の調理方法及び経営方法を完全に履行し、商品の均一性を維持して、品質低下を防止するため、原告の指定するすべての原材料を使用する。その調理及び経営の詳細は、「ほつかほつか亭マニュアル集」によるものとする。販売品目、規格、盛付、販売価格も原告の指定するとおりとし、材料についても、原告の指定する業者から指定の材料の供給を受ける。

(五) 連盟店は原告に無断で、他の営業場所においても同業種、同事業をしてはならない。

(六) 連盟店が左記条項に該当した場合には、原告は通知、催告なく契約を解除することができる。この場合、連盟店は損害賠償として、六〇か月分のロイヤルティを支払わなければならない。

(1) 前記(三)に違反したとき。

(2) 本チェーン店の事業を妨げたり、妨げようとする行為があつた場合。

(3) 正当な理由なく、原告から商品を購入しない場合。

(4) 連盟店がチェーン連盟加盟契約に定める義務を履行しない場合。

(5) 本チェーン店を脱退又はせん動する行為がある場合。

(七) チェーン連盟加盟契約が解除された場合、連盟店は左の処置をとるものとする。

(1) 原告から与えられた権利の行使を直ちに停止する。

(2) 原告が貸与した物件を即時返還し、原告の商標及び営業上のシンボル等を構成するものは、連盟店が費用を負担し、即時撤収・撤去する。

(3) チェーン連盟加盟契約による営業場所で、同業種による同事業をしない。

5  原告は本フランチャイズ組織の「ザー」となり、被告らは同組織の「ジー」となり、被告らと左記日時に、左記店舗をそれぞれ加盟店とする前項の内容のチェーン連盟加盟契約(以下本契約という)及び商品取引基本契約を締結した。なお、被告村平との左記(1)及び(2)の連盟店の「ザー」は、契約締結当時原告が未設立であつたため、東京の前記本部の名義となつており、昭和五五年三月一八日原告が設立されるとともに、契約上の地位が原告に移転された。

(一) 被告村平の場合

(1) 八尾店  昭和五四年一一月二一日

(2) 春日出店 〃五五年三月二二日

(3) 市岡店  同年一一月一八日

(4) 夕凪店  同年一二月一二日

(5) 八幡屋店 昭和五六年三月二〇日

(6) 九条店  同年一〇月七日

(二) 被告安保の場合

(1) 千林大宮店 昭和五五年五月二一日

(2) 清水店   〃五六年一月一〇日

(3) 都島店   同年五月一日

6  原告は本契約の締結にともない、「ほつかほつか亭マニュアル集」を、被告村平に対し五冊、被告安保に対し一冊貸与した。

7  被告両名の契約違反行為

(一) 被告両名に共通の行為

(1) 「(仮称)ほつかほつか亭協同組合設立の件」と題する呼びかけ文書(甲第三号証)について

被告両名は、共謀のうえ、昭和五六年一一月初旬、発起人の主導者となつて、「(仮称)ほつかほつか亭協同組合設立の件」と題する文書(甲第三号証、以下本件文書という)を作成し、連盟店のすべての店主に対し、同月一二日午後九時三〇分からの会合を呼びかけ、「一日、二日休んでも組合発足の会合に出席するように」との記載を本件文書にしたうえ、出席方を促して、本件文書を右全員に郵送した。なお、原告のチェーン組織は年中無休を統一イメージとしており、本件文書は右の点からもフランチャイズ組織の統制を乱すものであつた。

(2) 本件文書の内容は、「金儲主義第一の本部である」とか、以下に述べる追求問題点①ないし⑥のように、虚構の内容を並べたてて原告や関連業者を誹謗し、「本部追放のため、今回協同組合を設立する運びとなつた」として、組合への加入協力を呼びかけたものであつた。

(3) 本件文書で「追求問題点」として主張されていることは事実無根のことである。

追求問題点の①では、食材、包材、建築業者が一般業者価格より暴利を貪つており、原告がこれらと癒着してリベートを取つていると非難する。

イ その例として挙げられている指定桜漬については高品質の物を一括大量購入しているものであり、常に品質の吟味を怠つていない。又、指定油については味の素の大豆白絞油を使用させているが、被告らのいう一般二七〇〇円の食用油では信用のおけるメーカー品はなく、ノーブランドの三流品しかありえない。

ロ 指定のりも有名老舗である東京日本橋山本海苔店、百貨店ブランドの海苔を納入している大手海苔卸問屋の本井のりから一括購入しているもので、一流銘柄と比肩しうる高品質なものであつて、同品質ののりは本件文書に記されている価格では購入できない。

ハ 指定とんかつも有力肉問屋しげ、河富の両卸店から年間統一価格による供給を受けており、一時的に豚肉市況が軟化した時に、右統一価格以下の豚肉の買入れが可能であつたとしても、年間を通じて均等な品質、価格で購入することは結局は経済的であり、又、品質保持のために必要なことである。

ニ 指定工事費について、原告が工事業者を指定するのは、店舗の統一仕様のためのほか、原告は連盟店の営業について指導、助言、援助を行う義務があるが、営業開始後のアフターサービス、殊に各種機器のメインテナンスについては協力関係の緊密な指定業者でなければ即時の対応がとれず、連盟店の営業に支障を来すおそれがあるからである。

ホ このように、原告の指定商品が暴利であるかのような本件文書の記載はいずれも劣悪な品質の商品の価格を示すことにより、数を頼んで原告に低品質、低価格商品の採用を強要し、品質の低下に目をつぶり、自己の利幅の向上を計画したものであつて、フランチャイズシステムの根幹をゆるがすものとして原告の断じて容認しえないものである。

(4) 被告らは「追求問題点」の②で、「現場経験のない無機能(無能の意か)な者が厨房図面、内装図面を書き、高利なリベートをむさぼり、又、全く何も知らないオーナーに欠陥だらけの店を押しつけ、営業をさす」と主張するが、これは事実に反する。

原告は工事指定業者として株式会社ダンと株式会社タクミの両社を指定しており、両社共原告の市場調査に基づく仕様を理解し、フランチャイズシステムとして必要な統一イメージの表現、レイアウトについて一般業者ではなしえない域に達しており、又、両社を競争させることにより、工事価格の低減をはかつているうえ、冷蔵庫、クーラー等の機器については、原告がメーカーから大量に引取ることを保証して価格も安く設置できるようにしている。

(5) 被告らは「追求問題点」の③で、「ロイヤルティは連盟店の教育、経営指導及び管理を本来の目的としたものであるのに、その使途が不明」と主張するが、そもそもロイヤルティは、連盟店が「ほつかほつか亭」の名称を使用し、経営上の助言指導を受け、フランチャイズチェーンとしての統一イメージのもとに営業する対価として原告に支払うものであり、その使途処分は原告の専権に属し、連盟店側がこれについて容喙できるものではない。

右の点につき、連盟店が発言権を有するとして連盟店を煽動する被告らの態度は、フランチャイズシステムの一員であることを無視し、その破壊を目的とした行動といえる。

なお、原告は連盟店の発展を念願し、経営指導や従業員の教育につとめているものである。

(6) 「追求問題点」の④で、「原告が連盟店のオーナーなどの教育、経営指導、管理ができない」などと主張するが、右主張は、「ほつかほつか亭」の統一イメージのもとに、連盟店において、均等な品質の商品を提供し、均質なサービスが要求されるフランチャイズシステムを保持するために、当然必要とされる原告の指導、助言、管理を否定し、自己に都合のよい営業活動の独自性を煽動するもので、フランチャイズシステムの基本をゆるがすものである。

(7) 「追求問題点」の⑤の、「無能なバイサー」とか「権力をかさにきた高圧的な態度」等の主張もいわれなき中傷である。逆に、被告村平こそ原告代表者の青木の名を呼び捨てにしているものである。

(8) 「追求問題点」の⑥の「無計画な本部の出店及び市場開発による既存店の生活権の無視、新店を、八〇〇メートル離れていたら、既存店に連絡なしに原告がオープンさせる」との主張も、不当な非難、中傷である。

持ち帰り弁当のフランチャイズシステムは加盟店を増加することによつてその名称の消費者への浸透が強まり、ひいてはフランチャイズシステムとしての統一イメージの向上が期待される。したがつて、原告が同業他社に先がけて店舗数を拡大し、消費者に対するイメージアップを図るのはフランチャイザーとして当然の行動であり、連盟店も均しくその利益を享受することとなるのである。

もつとも、原告は立地条件、市場調査を行つたうえ、出店の可否を決定しているのであつて、既存店の経営の悪化を惹起するような出店は認めていない。

(9) 以上で明らかなように、本件文書は、被告両名が真実に反する虚偽の事項を羅列し、原告を中傷して連盟店を煽動し、連盟店を糾合して原告に対抗し、原告のコントロールの排除を計画したものであり、フランチャイズシステムの存立の基盤を揺るがし、フランチャイズシステムを崩壊させる危険極りない内容のもので、原告と連盟店間のフランチャイズシステムの維持発展を念願して、真面目に協力し合つてゆくための改善要求とは全く異質なものであつた。

そうして、被告らは、同月一二日に被告安保が議長となつて会合を強行した。

被告両名の以上の行為は、本契約七条七号、九条一項四号及び九号に該当する違反行為であり、本契約の解除事由にあたるものである。

(二) 被告村平単独の違反行為

(1) 店頭に表示するカラーコルトン(弁当写真)に原告の指定するものを使用せず、被告村平が用意したものを使用した。

(2) テントや看板、チラシ広告等に、「ほつかほつか亭クック○○店」と本チェーン組織と無関係な「クック」なる表示を挿入したり、勤務の店員の電話応答にも「クック○○店」と呼ばせる等した。これは、当初の契約時に、被告村平が「ファーストフードクック」なる屋号でたこ焼店を営んでいて、「クック」に愛着があるので使用させて欲しいと強くいうので一時承認したことがあつたが、チェーン組織に悪影響を及ぼすので、原告はこの使用禁止を要請していたところ、被告村平は昭和五六年一〇月六日原告代表者青木に対し、使用禁止を約束しながら、改めないままとなつていた。

(3) 弁当には原告の指定する包装紙を使用することになつているのにこれを使用せず、裸渡しをしていた。

(4) 毎月のロイヤルティの支払期限は毎月末日であるところ、被告村平の昭和五六年一〇月分から同月一二月分までのロイヤルティの合計は九〇万円(一店舗一か月五万円であるから、被告村平は六店舗で一か月三〇万円)であり、既に右期限が到来した。

(5) セット販売は禁止されているにもかかわらず、八尾店を除く五店で、幕の内弁当四〇〇円、サラダ一八〇円、みそ汁七〇円を「幕の内セット」と称し、六〇〇円(右合計価格より五〇円低い)で販売した。又、九条店を除く五店について、焼肉弁当とかき揚げ弁当を販売しない。

(6) しやけ切身、さくら大根、肩ロースを原告の指定する業者から購入せず、被告村平が独自に購入して、食材として使用している。

(7) 大阪市此花区西島三丁目八―二五において、「ほつかほつか亭クック西島店」を近日オープンさせるとして、昭和五七年一月一九日の折込広告で従業員の募集を始め、店舗の開設準備を始めて同業種の店舗を開店した。

(8) 従来の「八幡屋店」を「港晴店」なる屋号に変更し、新たに昭和五七年一月二八日大阪市港区八幡屋二丁目六に「ほつかほつか亭クック八幡店」を開店した。

(三) 被告安保単独の違反行為

(1) 昭和五七年一月八日、守口市東光町二丁目三三番一号で、「ほつかほつか亭東光店」を開店し、営業を始めた。

(2) 弁当に原告の指定する包装紙を使用せず、裸渡しをしていた。

(3) とり肉、豚ロース、さくら大根、肩ロース、ちくわ、焼肉たれを原告の指定する業者から購入せず、被告安保が独自に購入して、食材として使用していた。

(4) 毎月のロイヤルティの支払期限は毎月末日であるところ、被告安保の昭和五六年一二月分のロイヤルティは合計で一五万円(一店舗一か月五万円であるから、三店舗で一五万円)であり、既に右期限が到来した。

8  原告の契約解除

(一) 被告村平に対する解除

(1) 原告は昭和五七年一月一一日付内容証明郵便で本件文書に関連する行為を指摘し、「クック」なる呼称の中止、指定包装紙の使用、セット販売方法による弁当の販売の中止、指定業者以外の食材の使用中止を求めるとともに、同郵便到達後七日以内に、謝罪文の提出、カラーコルトン及び「クック」の表示を原告指定のもとに改めること及び未払のロイヤルティの支払を催告し、同郵便は同月一二日被告村平に到達した。

(2) しかるに、被告村平は右期限を経過しても誠意ある解答を示さなかつた。

そこで、原告は被告村平の前記7の(一)及び(二)の行為が本契約七条の七号、九条一項四号、五号、九号、一〇号に該当する違反行為であることを理由に、昭和五七年一月二二日、同被告に対し、本契約並びに商品取引基本契約を解除する旨の意思表示をなし、右意思表示は同月二三日同被告に到達した。

(二) 被告安保に対する解除

(1) 原告は昭和五七年一月一三日付内容証明郵便で被告安保に対し、本件文書に関連する行為を指摘し、同郵便到達後五日以内に東光店での営業の停止を求め、同郵便は翌一四日同被告に到達した。

(2) しかし、同被告は右期限を経過しても誠意ある回答を示さなかつた。

そこで、原告は昭和五七年一月二二日被告安保に対し、前記被告村平と同じ理由から本契約を解除する旨の意思表示をなし、右は同日、同被告に到達した。

9  よつて、原告は

(一) 被告村平に対し、貸与した「ほつかほつか亭マニュアル集」五冊の返還、六店舗のロイヤルティの六〇か月分一八〇〇万円及び昭和五六年一〇月一日から契約解除の日である昭和五七年一月二三日までのロイヤルティ一一二万二五八〇円、合計金一九一二万二五八〇円並びに右金員に対する遅滞後である昭和五七年七月六日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(二) 被告安保に対し、貸与した「ほつかほつか亭マニュアル集」一冊の返還、三店舗のロイヤルティの六〇か月分九〇〇万円及び三店舗の昭和五六年一二月一日から契約解除の日である昭和五七年一月二二日までのロイヤルティ二五万六四五一円、合計金九二五万六四五一円並びに右金員に対する遅滞後である昭和五七年七月五日から支払ずみまで前同率の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1項は認める。

2  同2項は認める。

3  同3項は認める。

4  同4項は認める。

5  同5項は認める。

6  同6項のうち、本契約の締結に伴ない、原告から、被告村平が「ほつかほつか亭マニュアル集」五冊の、被告安保が同一冊の各交付を受けたことは認めるが、右は貸与されたものではなく、贈与されたものである。

7(一)(1) 同7項の(一)の(1)のうち、本件文書が原告のフランチャイズ組織の統制を乱すものであつたとの点は否認し、その余の事実は認める。

(2) 同項の(1)の(2)ないし(9)のうち、本件文書に原告の主張する記載がなされていること、被告らが被告安保を議長として会合を開催したことは認めるが、これらの記載が虚偽のものであり、本件文書が連盟店を煽動し、原告の主張するような目的を有した文書であること、したがつて、被告らの行為が本契約に違反し、解除事由に該当するものであることは否認する。

(3) 本件文書の記載、特に追求問題点として記載したことは当時の改善すべき問題点の提起であり、その表現には不適切な部分もあるが、真実を記載したものである。

被告両名が協同組合を設立しようとした趣旨は、原告の運営に関する問題点を指摘し、これを改善することを目的としたものである。

即ち、被告両名は、同業者が乱立し、同業の店舗が競合するようになつてきたため、原告と連盟店が一致協力し、チェーン全体の強化、改善、発展をはかることが必要と考え、現場において客のニーズ等をキャッチしている連盟店が原告に改善点等について積極的に意見を具申し、原告はこれらの意見を斟酌してその運営に生かし、原告と連盟店が相互に意見の疎通をはかる必要性があると考え、協同組合の設立を計画した。

したがつて、被告らは、自らが連盟店を脱退することや他の連盟店に脱退を煽動する意思や原告と連盟店とを離反させる計画などは有していなかつた。

原告は、このような被告らの行動を曲解したものである。

(二)(1) 同項の(二)の(1)は認める。

(2) 同項の(二)の(2)のうち、被告村平が「クック」の表示ないし呼称を使用していることは認めるが、原告に是正の約束をしたとの点は否認する。昭和五六年一〇月ころ、原告から「クック」の使用を中止してくれないかとの話があり、被告村平は食材、包材及び店舗の工事業者について、原告の指定する業者よりも安くて、同等ないし良質のものを供給する業者がいた場合、そこから購入したり、工事を注文することを原告が承諾するならば「クック」の使用を中止してもよいと回答したところ、原告は検討のうえ返答する旨約束しながら回答がないものである。

(3) 同項の(二)の(3)のうち、裸渡しをしていたことは認めるが、原告指定の包装紙を使用することになつているとの点は否認する。

(4) 同項の(二)の(4)は認める。

(5) 同項の(二)の(5)のうち、セット販売が禁止されているとの点は否認し、その余の事実は認める。

(6) 同項の(二)の(6)のうち、さくら大根を原告の指定業者から購入していないことは認めるが、その余については否認する。

(7) 同項の(二)の(7)、(8)は認める。

(三)(1) 同項の(三)の(1)は認める。

(2) 同項の(三)の(2)は認める。

(3) 同項の(三)の(3)のうち、焼肉のたれ以外の食材を原告の指定業者以外の者から購入したことは認めるが、その余の食材については否認する。

(4) 同項の(三)の(4)は認める。

8  同8項のうち、被告らが原告主張の各内容証明郵便及び解除の意思表示を受領したことは認めるが、解除の効力は争う。その余の事実は否認する。

三  抗弁

1  被告村平の抗弁

(一) 被告村平が使用しているカラーコルトンは、同被告が昭和五四年一〇月ころ最初に店を開く際、当時事業部長であつた青木達也(現在の代表者)の了解のもとに、関西における第一号店(ほつかほつか亭西宮店)の弁当の写真を写し、作成したもので、それ以来使用しているものであり、したがつて、その使用については原告の承諾をえている。

(二) 弁当の裸渡しについては、原告はこれを承認していた。

(三)(1) ロイヤルティの支払は取立て債務であるところ、原告が集金に来なかつたため、期限が徒過した。

(2) 被告村平は昭和五七年一月二三日原告主張の金額をその口座に振込んで支払つた。

(3) 原告は、被告村平が右(2)で支払つた金員をその後同被告の口座に振込んで返金することによつて右ロイヤルティの請求権を放棄した。

(四) セット販売については原告の承認があつた

また、焼肉弁当の販売については、原告の焼肉弁当は豚肉を使用しているので、豚肉使用の表示をするように原告に申し入れたところ、原告はこれに同意しながら、そのまま放置されていたので販売しなかつたものである。

(五) さくら大根を原告の指定業者以外の者から購入することについては原告の承諾をえていた。

(六) 店舗の開店については、事前に原告の承認をうる必要はなく、事後(開店時)に承認をえればよいものであり、かつ、原告の承認をえていた。

(七) 屋号の変更については、原告の承諾があつた。

2  被告安保の抗弁

(一) 被告安保は東光店の開店については、店舗の賃貸借契約をなすにつき、昭和五六年一〇月三〇日原告(具体的には門矢氏を通じて)の承諾をえ、さらに、原告の指定業者株式会社ダンより見積りをとる前にも原告の承諾をえている。

(二) 弁当の裸渡しについては、中止した後原告から尋ねられたので、一週間程したが、既に中止した旨報告したところ、原告はこれを了解した。

(三) とり肉などの食材を原告の指定業者以外の者から購入することについては原告の承諾をえていた。

(四)(1) 被告安保は昭和五七年一月ころ、昭和五六年一二月分のロイヤルティを原告の口座に振込んで支払つた。

(2) 原告はその後右(1)の金員を被告安保の口座に振込んで返金することによつて右ロイヤルティ請求権を放棄した。

3  被告両名の抗弁

(一) 和解の成立

原告と被告らは、昭和五六年一一月二七日、東京地区の連盟店である佐藤弘毅らの仲介により、ホテルプラザにおいて次のとおり和解した。

(1) 原告はテリトリー八〇〇メートルを守り、既存のオーナーを優先的に出店させ、かつ、他店オーナーが新規に出店する場合は、契約以前に近隣の既存オーナーに報告し、双方円満に合意に達した時点で、原告は出店を許可する。

(2) 食材、包材については、原告指定の商品に限らず、品質が同等もしくはそれ以上に良い商品であれば、原告は、連盟店が原告の指定業者以外から購入することを了解する。

(3) 店舗設備について、原告は、原告の規定に沿うものであれば、指定業者に限らず、それ以外の業者に施工注文を行うことを了解する。

原告と被告らとの間で、右三点について合意が成立し、原告は被告らに対し、被告らの責任の追求をしないとの和解が成立した。

(二) 本契約では、損害賠償の予定としてロイヤルティの六〇か月分の支払を定めているが、右は本件における実損との比較において(本件では実損は殆んどない)余りにも高額で、暴利行為に該当し、公序良俗に反し無効である。

四  抗弁に対する認否

1  被告村平の抗弁に対する認否

(一) 抗弁の1の(一)は否認する。

(二) 同(二)は否認する。

(三) 同(三)の(1)のロイヤルティの支払が取立て債務であることは否認する。(2)の事実は認める。(3)の返金の事実は認めるが、請求権を放棄したとの点は否認する。

(四) 同(四)のセット販売を承認したとの事実は否認する。次に、原告が焼肉弁当に、豚肉使用との表示の変更を行うことを約束したことはない。

(五) 同(五)は否認する。

(六) 同(六)は否認する。店舗開設の準備段階で事前に原告の承認をえなければ、承認の意義はない。

(七) 同(七)は否認する。

2  被告安保の抗弁に対する認否

(一) 抗弁の2の(一)の原告の承諾をえているとの点は否認する。

(二) 同(二)は否認する。

(三) 同(三)は否認する。

(四) 同(四)の(1)は認める。(2)のうち、被告安保に返金したことは認めるが、ロイヤルティの請求権を放棄したとの点は否認する。

3  被告両名の抗弁に対する認否

(一) 抗弁の3の(一)の和解の成立は否認する。

被告ら主張の日時、場所において、原告と被告らとの話し合いが行われたことは事実であるが、右話し合いでは、被告らが原告に対し、陳謝文を提出すること及び被告らの前記契約違反行為を是正することを条件に、被告らの要求事項のうち、新規出店の場合、既存店との距離を八〇〇メートル以上おくこと、店舗建設業者の指定は弾力的に運用することを了承し、事態が円満に収まることを期待した。

しかるに、被告らはその後陳謝文を提出せず、また、違反行為の是正をはかるどころか、違反を継続した。

このように、被告ら主張の和解は成立していない。

(二) 同(二)の公序良俗違反の主張は争う。

五  再抗弁

1  被告村平の九〇万円の支払は、原告が昭和五七年一月一九日までに支払うよう同被告に催告したのに対し、右期限徒過後、後記原告の本契約解除の通知が同被告に到達した当日になされたものであり、債務の本旨に従つた支払ではない。

2  被告安保のロイヤルティの支払は、原告が後記同被告との本契約を解除した後になされたものであり、債務の本旨に従つた支払ではない。

3  仮に、被告ら主張の和解が成立したとしても、被告らはその後、右和解条項を順守していない。

即ち、右和解条項には、「原告は新たな連盟店の出店の場合には、既存店のオーナーに必ず連絡し、テリトリー八〇〇メートルを順守する」との項目があつたというのであるから、連盟店主は、出店の場合には事前に原告の承認をうる必要があることになる。

しかるに、被告らは昭和五七年一月原告の事前の承諾をうることなく、出店することによつて和解事項に違反した。

したがつて、被告らは原告に対し、和解成立の効果を主張できない。

六  再抗弁に対する認否

いずれも争う。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因1ないし5項の事実は当事者間に争いがない。

二同6項につき調べるに、本契約の締結に伴ない、被告らが原告から、それぞれ原告主張の冊数の「ほつかほつか亭マニュアル集」を受け取つたことは双方間に争いがない。

被告らは右マニュアル集は貸与されたものではなく、贈与を受けたものであると主張するが、〈証拠〉によれば、右マニュアル集は、本契約の締結に伴ない、原告から被告らに貸与されたもので、契約終了の際には直ちに原告に返還すべきものであることが認められ、右認定を動かすに足りる証拠はない。

三同7項(契約違反行為)につき判断する。

1  最初に、被告両名に、共通の契約解除事由となる契約違反行為があるか否かについて検討する。

(一)  同項の(一)の(1)のうち、本件文書がフランチャイズ組織の統制を乱すものであつたか否かの点を除くその余の事実は当事者に争いがなく、〈証拠〉によれば、原告のチェーン組織は年中無休を統一イメージとしていることが認められるから、右認定によれば、本件文書に、「一日、二日休んでも組合発足の会合に出席するように」との記載がなされたことは、年中無休を統一イメージとする原告のフランチャイズ組織の統制を乱すものといえる。

(二)  本件文書が原告の主張するような性格の文書で、被告らが本件文書を作成し、連盟店主に郵送したうえ、会合を開いたことが契約違反になるか否かの判断の前提として、本件文書の記載内容が真実に反する虚偽の事項を羅列したものであるか否かについて検討する。

(1) 本件文書に「金儲主義第一の本部」とか、追求問題点①ないし⑥などの原告の主張する記載があることは双方間に争いがない。

(2) まず、「金儲主義第一の本部」との記載が事実無根の虚偽であるか否かについて調べるに、〈証拠〉によれば、少なくとも、原告が本件文書の記載にあるような金儲主義第一の本部とまではいえないことが認められる。

〈証拠〉には、「原告が金儲けに走る本部である」との供述部分があるが、商人が営業活動において利潤を追求するのは格別否定すべきことでないから、右供述のみをもつて、原告が金儲主義第一であるとまではいうことができない。

右によれば、「金儲主義第一の本部」との記載は真実に反し、虚偽であるというべきである。

(3) 追求問題点の①につき考える。

原告は、原告の指定食材や指定業者による工事費が指定業者以外のものに比べて高いことはなく、追求問題点の①に記載されている被告ら主張の価格の食材は、原告の指定食材より劣悪な品質のものであり、また、原告はリベートを一切取つていないから、右①の記載は事実に反し、虚偽であると主張し、〈証拠〉には右主張に副う供述部分がある。

しかしながら、他方、〈証拠〉には、原告の指定食材や指定業者の工事費は一般業者の商品や工事費に比べて高いし、その理由は、原告が指定業者からリベートを取つているからである旨の供述部分が存する。

そうして、被告らの右供述の信用性を検討した場合、その内容の具体性などからみて、少なくとも原告の指定業者の工事費については被告らの供述が全く事実に反する虚偽のものであると断ずるには躊躇を覚えざるをえない。

結局、当裁判所としては、右の点からみて、追求問題点①の記載内容がすべて真実に反し、虚偽であるとするには未だ疑問があるといわざるをえない。

(4) 追求問題点の②につき検討する。

〈証拠〉によれば、少なくとも、原告の担当者は店舗を営業した経験が乏しく、そのような者が厨房の図面や内装の図面を作成しており、また、原告は指定工事者からリベートをえていたのではないかとの疑いが生ずる(右の点を否定する〈証拠〉は措信し難い)。

したがつて、右の疑問が生ずる以上、追求問題点の②のうち、「現場経験のない者が厨房図面や内装図面を作成し、リベートを得ている」との記載部分が真実に反する虚構のものであると断ずるのは困難である。

一方、②の「全く何も知らないオーナーに危険だらけの店を押しつけ、営業をさせている」との記載部分については、〈証拠〉によれば、そのような事実はないと推認しうるから、右の記載は虚構というべきである。

(5) 追求問題点の③につき考えるに、〈証拠〉によれば、ロイヤルティは、連盟店が営業の対価として原告に支払うもので、その使途処分は原告の専権に属するものであることが認められる。

右事実に照らせば、右③の記載内容は真実に反する虚偽といいうる。

(6) 追求問題点の④につき調べる。

〈証拠〉によれば、原告は連盟店の経営や従業員に対する指導、教育については、本部直営の研修センターで行う研修会などを通して、指導、教育していること、調理方法などについても食材研修会などによつて指導をはかつていることが認められる。

〈証拠〉中、右認定に抵触する部分はそのまま信用することはできない。

右認定によれば、右④の記載内容は真実をそのまま伝えたものとすることはできず、虚偽といえる。

(7) 追求問題点の⑤につき検討する。

〈証拠〉によれば、右⑤に記載してあるような事実は存しないことが認められる。

〈証拠〉によれば、同被告自身、右記載内容が事実と異なる過剰な表現であることを認めていることが窺える。

以上によれば、右⑤の記載は真実ではなく、虚偽というべきである。

(8) 追求問題点の⑥につき調べる。

〈証拠〉によれば、原告は新たな連盟店の出店については、市場調査を行い、既存の連盟店との競合問題を検討したうえで開店の是非を決定しており、そのための一条件として、連盟店と連盟店との距離を八〇〇メートル以上離しているもので、無計画には出店を承認していないこと、しかし、新しい連盟店の出店については、既存のオーナーヘの原告からの連絡が必ずしも十分ではなかつた場合もあつたことが認められる。

〈証拠〉のうち、右認定に反する部分(出店については、常に既存のオーナーに連絡を怠つたことはないとの部分)は措信し難い。

右認定によれば、⑥の記載のうち、出店について連絡がないとの部分は一応事実に合致している面も含んでいるともいえるが、その余の部分は事実と異なる虚偽のものといえる。

尚、被告らは、その本人尋問において、右⑥の記載は出店について、原告から連絡がないことを意味するものであると供述するが、右⑥の記載をそのようにのみ限定して解釈することは、記載の内容自体に照らし、困難である。

(三)  以上みてきたところによれば、被告らが本件文書に「金儲主義第一の本部」とか、追求問題点の①ないし⑥として記載した内容は、一部虚偽とは断じ難い部分もあるが、そのかなりのものは真実を述べたものではなく、虚偽というべきものである(〈証拠〉も右結論を裏づけるものといえる)。

なお、〈証拠〉の中には、本件文書の記載について、原告から虚偽の内容が書かれているとの説明はなかつたとの供述部分があるが、原告が佐藤に本件文書の記載が虚偽か否かの説明を格別しなかつたからといつて、そのことから直ちにその記載が虚偽でなく、真実であると断定しうるものでもない。

ところで、被告らは、被告らが協同組合を設立しようとした趣旨は、原告の運営に関する問題点を指摘し、その改善を目的としたもので、原告の連盟店からの脱退や他の連盟店に脱退を煽動する意思や原告と連盟店とを離反させる計画はなかつたと主張する。

この点につき、〈証拠〉には右主張に符合する供述部分が存する。

しかしながら、既にみたように、協同組合設立のための呼びかけ文書である本件文書の内容には、虚偽のものが数多く記載されているうえ、その表現をみると、「現場のことを何も知らない出来ない金儲主義第一の本部に対し、徹底的に追求し」とか、「組合は本部に対して真向から対決し」、「金儲主義の本部追放のため」という如き、単に問題点の指摘、改善ということのみにはとどまらない、極めて過激な、かつ、本件文書を読む者の感情を煽り立てるような表現がなされていることは明白である。

このような表現がなされている本件文書を素直に読む限り、本件文書は、被告らが単に問題点の指摘、改善を意図したのみではなく、他の連盟店のオーナーを煽動し、連盟店を糾合して原告と対立、対抗しようとした趣旨、内容も含まれている文書であると解釈するのが相当である。

そうして、被告らが作成した本件文書の内容が右にみたようなものである以上、右作成に引続き、被告らが本件文書を連盟店主に郵送して協同組合設立を呼びかけ、その設立のための会合を開いた行為も、本件文書の作成と同様、連盟店主を煽動する行為であるということができる。

(四)  以上述べてきたところに、〈証拠〉を併せ考えると、被告らが本件文書を作成、配付し、協同組合設立のための会合を開催したことは、少なくとも本契約九条一項四号及び九号に該当するもので、契約解除事由になるものというべきである。

2  次に、被告村平単独の契約違反行為があるか否かについて検討する。

(一)  請求原因7項の(二)の(1)の事実は原告と被告村平との間で争いがない。

右に対する被告村平の抗弁の(一)につき考える。

〈証拠〉には、同被告が独自のカラーコルトンを使用するについては原告の承諾をえていたとの抗弁事実に符合する供述部分がある。

しかし、右供述は〈証拠〉に照らすとそのまま信用し難く、他に抗弁事実を認めるに足りる証拠はない。

(二)  同項の(二)の(2)のうち、被告村平が「クック」の表示や呼称を使用していることは原告と同被告との間で争いがない。

そこで、被告村平が昭和五六年一〇月六日原告の代表者青木に対し、「クック」の使用を中止する旨約束したか否かについて調べるに、〈証拠〉によれば、同被告が右日時ころ、右の約束をしたことが認められ、〈証拠〉中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を動かすに足りる証拠はない。

(三)  同項の(二)の(3)につき検討するに、被告村平が原告指定の包装紙を使用せず、弁当の裸渡しをしていたことは原告と被告村平との間で争いがない。

ところで、被告村平は、原告との間で、原告指定の包装紙を使用する決まりになつていたことを否定するが、〈証拠〉によれば、連盟店は衛生面や原告のイメージを消費者に知つてもらうとの原告の方針から、原告の指定する包装紙を使用することになつていたことが認められる。

そこで、被告村平の、原告の指定する包装紙を使用せず、裸渡しをすることについては原告の承諾をえていたとの抗弁につき判断する。

〈証拠〉中には右主張に符合する供述部分があるが、右は〈証拠〉に対比し、たやすく措信し難く、他に抗弁事実を認めるに足りる証拠はない。

(四)  同項の(二)の(4)につき検討する。

右事実は原告と被告村平との間で争いがない。

被告村平は、まず、ロイヤルティの支払は取立て債務であると主張するところ、〈証拠〉には右主張に副う供述部分があるが、右は〈証拠〉に照らし措信できず、他にこれを認めるべき証拠はない。

次に、被告村平はロイヤルティ九〇万円を昭和五五年一月二三日原告に支払つた旨主張するところ、右主張事実は原告もこれを認めるところである。

そこで、原告の再抗弁につき考えるに、〈証拠〉によれば、右の支払は、原告が昭和五七年一月一二日に被告村平に到達した内容証明郵便で、同月一九日までの期限を定めて支払うよう催告したのに対し、右期限徒過後に振込まれたものであることが認められる。

したがつて、右認定によれば、被告村平の九〇万円の支払は債務の本旨に従つたものということはできない。

さらに、被告村平は、原告がロイヤルティの請求権を放棄したとも主張するが、右主張事実を認めるに足りる証拠はないから(かえつて、〈証拠〉によれば、請求権の放棄の事実はないことが認められる)、被告村平の右主張も採りえない。

以上によれば、被告村平は原告主張のロイヤルティ九〇万につき未払であるというべきである。

(五)  同項の(二)の(5)につき調べるに、被告村平がセット販売をしていたことは原告と被告村平との間で争いがなく、〈証拠〉によれば、セット販売は本契約上禁止されていることが認められる。

そこで、被告村平の抗弁につき検討する。

〈証拠〉には、セット販売については原告の承諾があつたとの同被告の主張に副う供述部分があるが、右は〈証拠〉に照らすとそのまま信用することはできず、他に右抗弁を認めるに足りる証拠はない。

次に、焼肉弁当の販売に関する被告村平の主張についてはこれを認めるに足りる証拠はない。

(六)  同項の(二)の(6)につき判断するに、被告村平がさくら大根を原告の指定業者以外の者から購入していることは被告村平もこれを認めるところであり、〈証拠〉によれば、しやけの切身や肩ロースを被告村平が原告の指定業者以外の者から購入していることが認められる。

進んで、被告村平の、右購入については原告の承諾をえていたとの抗弁につき調べるに、〈証拠〉には右主張に副う供述部分があるが、右は〈証拠〉に照らし、たすく信用することはできず、他に右主張を認めるに足りる証拠はない。

(七)  同項の(二)の(7)、(8)につき検討するに、右事実は原告と被告村平との間で争いがない。

被告村平の抗弁について考える。

〈証拠〉には、右抗弁事実に副う供述部分があるが、右は〈証拠〉に対比し、措信し難く、他に右主張事実を認めるに足りる証拠はない。

(八)  以上に、〈証拠〉を併せ考えると、被告村平の右(一)ないし(三)で認定した行為は本契約四条二号、本契約の引用する技術指導営業方法等細則七条に、(四)で認定した行為は二条二項2号に、(五)で認定したセット販売を行つた行為は四条二号、技術指導営業方法等細則三条に、(六)で認定した行為は四条一号に、(七)で認定した各行為は七条四号にそれぞれ違反する行為であり、右違反行為全部を眺めると、したがつて、本契約九条一項一号、五号、七号、一〇号のいずれかにより契約解除事由となるものである。

3  被告安保単独の契約違反行為があるか否かについて判断する。

(一)  請求原因7項の(三)の(1)の事実は原告と被告安保との間で争いがない。

そこで、抗弁につき調べる。

〈証拠〉には、東光店の開店については原告の承諾をえていたとの抗弁事実に副う供述部分があるが、右は〈証拠〉に照らし措信し難く、他に右抗弁事実を認めるに足りる証拠はない。

(二)  同項の(三)の(2)につき考えるに、右事実は原告と被告安保との間で争いがない。

抗弁につき調べるに、〈証拠〉には右主張に副う供述部分があるが、右は〈証拠〉に照らし措信し難く、他に抗弁事実を認めるに足りる証拠はない。

(三)  同項の(三)の(3)につき検討するに、被告安保が焼肉のたれ以外の食材を原告の指定業者以外の者から購入していたことは原告と被告安保との間で争いがない。

原告は、同被告が焼肉のたれも原告の指定業者から購入せず、他の業者から購入していると主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

そこで、焼肉のたれ以外の食材を指定業者以外の者から購入するについては原告の承諾をえていたとの被告安保の抗弁につき調べるに、〈証拠〉には原告の承諾があつたことを肯定するような供述部分があるが、右は〈証拠〉に照らし措信し難く、他に右承諾があつたことを認めるに足りる証拠はない。

(四)  同項の(三)の(4)につき判断するに、右事実は原告と被告安保との間で争いがない。

そこで、抗弁につき検討するに被告安保が昭和五七年一月ころ原告の口座に昭和五六年一二月分のロイヤルティ一五万円を振込んだことは原告もこれを認めるところである。

進んで、再抗弁につき考えるに、〈証拠〉によれば、右一五万円の振込みがなされたのは、原告が被告安保に対し、後記契約解除の意思表示をした後であることが認められる。

したがつて、被告安保のロイヤルティの支払は期限内になされた、債務の本旨に従つたものとすることはできない。

さらに、被告安保は、原告が右ロイヤルティの請求権を放棄したとも主張するが、右主張の事実を認めるに足りる証拠はないから、右抗弁も採りえない。

以上によれば、被告安保は原告主張のロイヤルティ一五万円につき未払であるというべきである。

(五)  以上に、〈証拠〉を併せ考えると、被告安保の右(一)で認定した行為は本契約七条四号に、(二)で認定した行為は四条二号、本契約の引用する技術指導営業方法等細則七条に、(三)で認定した行為は四条一号に、(四)で認定した行為は二条二項2号にそれぞれ違反する行為であり、したがつて、右違反行為全部を眺めると、本契約九条一項、一号、五号、七号、一〇号のいずれかにより契約解除事由となるものである。

四同8項(契約解除)について判断する。

1  同項のうち、被告らが原告主張の内容証明を受領し、かつ、解除の意思表示がなされたことは双方間に争いがない。

2  右争いのない事実によれば、原告は被告村平に対しては本契約七条七号、九条一項四号、五号、九号、一〇号を理由に同被告との契約を解除し、被告安保に対しても、被告村平に対するのと同じ理由で契約を解除したことが認められる。

ところで、前記三で認定した被告らの行為が本契約九条一項一号、四号、五号、七号、九号、一〇号のいずれかを理由に、解除事由に該当する行為であることは既にみたとおりであるから、結局、原告の被告らに対する解除は本契約九条一項四号、五号、九号、一〇号を理由とするものに該当する限り有効になされたものということができる。

五進んで、被告ら主張の和解の抗弁について判断する。

被告ら主張の日時、場所において、原告と被告らとの話し合いがなされたことは双方間に争いがない。

ところで、〈証拠〉には、被告ら主張の和解が成立し、原告は無条件で被告らの責任を追求しないことを約束したとの被告らの主張に副う供述部分がある。

また、〈証拠〉の中にも、右和解の成立を肯定するかのような供述部分がある。

しかし、右〈証拠〉については、その内容から明らかなように、同人自身は和解が成立したとされる昭和五七年一一月二七日のホテルプラザでの話し合いの内容を必らずしも具体的、正確、詳細に記憶しているものではなく、証言の中にはあやふやな供述部分が存するのであつて、以上に、〈証拠〉を併せ考えると、同人の和解の成立を肯定するかのような供述を真実に合致したものとしてそのまま信用することには問題があるといわざるをえない。

さらに、〈証拠〉にも、昭和五六年一一月二七日の話し合いで、原告と被告らとの紛争が円満に解決したかの如き記載があるが、〈証拠〉を全体的に眺めると、同証拠は右話し合いで一応の合意がえられた事項に限つてのみ記載がなされているものであり、原告と被告らとの本件の紛争が右話し合いによつてすべて円満に解決したか否かについては触れていないものと解釈されるから、〈証拠〉の存在も被告らの主張を首肯させるには十分ではない。

そうして、〈証拠〉にも前記〈証拠〉と同趣旨の記載がなされているが、右記載内容も〈証拠〉に照らしそのまま信用するのは困難である(現に、同号証の記載自体、少なくとも被告村平との関係ではすべての問題が解決したとはいいえないとの内容になつている)。

ところで、〈証拠〉を総合すれば、昭和五七年一一月二七日の話し合いでは、被告らが原告に陳謝文を提出することと違反行為を是正することが条件になつていたのではないかと思われ、右に照らすと、被告らの和解の成立を肯定した前記供述部分はたやすく信用するには問題があるといわざるをえない。

そして、他に被告ら主張の和解の成立を認めさせるに足りる証拠はない。

以上によれば、被告ら主張の和解の成立については未だこれを認めるには十分ではないから、右主張は採りえない。

六以上述べたところによれば、原告と被告らとの本契約はいずれも有効に解除されたものといえる。

したがつて、原告に対し、

1  被告村平は、

(一)  まず、貸与を受けた「ほつかほつか亭マニュアル集」五冊の返還義務がある。

(二) 次に、〈証拠〉によれば、前記四で認定した理由によつて本契約が解除された場合には、被告村平は原告に対し、損害賠償として六〇か月分のロイヤルティを支払わねばならないことになつている(九条二項)。

この点につき、被告らは、右規定は暴利行為であり、公序良俗に反すると主張する。

〈証拠〉によれば、本部と連盟店との「ほつかほつか亭」チェーン連盟加入契約は、二条二号により、存続期間が五年とされているから、右五年の存続期間に対応する趣旨で、解除の場合、五年間分(六〇か月分)のロイヤルティを損害賠償として支払わねばならないとの前記規定が定められたものと推認される。

ところで、被告らの主張するとおり、契約違反行為の態様、内容や実害の発生の有無、その額などに関係なく、契約が解除に至つた場合には、一律に六〇か月分のロイヤルティを損害賠償として支払わねばならないとの前記規定が高額の損害額の予定額を定めたものと解しうる余地があるであろうことは否定しえないであろう。

しかしながら、本契約の締結については、いわゆる経済的に劣後的な立場にある者が優位的立場にある者から融資を受けるような場合とは異なり、被告らが原告に対し、経済的に劣後的な立場にあつたとは認められないし、被告らとしても、本契約を締結して原告の連盟店の地位を取得することによつて、自己の経済的利益を確保、増大させるとの利害得失を考慮して、損害額の予定についての前記規定の存在も承知したうえで、原告に強制されるというようなこともなく、任意、自主的な判断によつて本契約の締結に至つたものと考えられることを斟酌すると、前記規定をもつてなお暴利行為で、公序良俗に違反するものとはいい難い。

したがつて、公序良俗違反との被告らの主張は採用しえない。

以上によれば、被告村平は原告に対し、六店舗(一店舗あたり五万円)の六〇か月分のロイヤルティ計一八〇〇万円の支払義務がある。

(三)  最後に、昭和五六年一〇月一日からのロイヤルティが未払であるので、右同日から本契約が解除された昭和五七年一月二三日までのロイヤルティの支払義務があるところ、〈証拠〉によれば、右金額は一二〇万円となるが(本契約二条二項二号)、原告は右のうち、一一二万二五八〇円の支払を求めているので、右同額の支払義務がある。

2  被告安保は、

(一)  まず、貸与を受けた「ほつかほつか亭マニュアル集」一冊の返還義務がある。

(二)  次に、解除に伴なう損害賠償として、六〇か月分のロイヤルティの支払義務があるので(その理由は、被告村平で判示のとおりである。また、公序良俗違反の主張が理由がないことも先にみたとおりである)、その金額は九〇〇万円となり、右同額の支払義務がある。

(三)  最後に、昭和五六年一二月一日からロイヤルティが未払であるので、右同日から本契約が解除された昭和五七年一月二二日までのロイヤルテイの支払義務があるところ、〈証拠〉によれば、右金額は三〇万円となるが(二条二項二号)、原告は右のうち、二五万六四五一円の支払を求めているので、右同額の支払義務がある。

七よつて、本契約の解除を理由に、被告村平に対し、「ほつかほつか亭マニュアル集」と題した手引書五冊の引渡と金一九一二万二五八〇円及びこれに対する解除後である昭和五七年七月六日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払、被告安保に対し、前記手引書一冊の引渡と金九二五万六四五一円及びこれに対する解除後である昭和五七年七月五日から支払ずみまで前同率の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める原告の本訴請求はすべて理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官武田和博)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例